ある日の昼下がり、公園のベンチで二人の老人が将棋を指していた。一人は元大手企業役員の佐藤さん、もう一人は長年町工場を経営してきた鈴木さんだ。
「近頃の政治はひどいもんじゃな」と、鈴木さんが角を成りながらぼやいた。
「わしらの若い頃は、もっと国に活気があった。」
佐藤さんは銀を動かし、冷静に答えた。
「そうですね。ですが、今の『国民が第一』と叫んでいる連中は、もっと危ういかもしれませんよ。」
「ほう、どうしてじゃ?自民党みたいに自分たちの懐を肥やすことしか考えていない連中よりはマシじゃないか?」
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鈴木さんは意外そうな顔をした。
「ええ、自民党は確かに国民から上手く吸い上げる仕組みを作って、自分たちの利益を確保してきました。彼らは言わば、日本という牛を飼う酪農家です。乳が飲みたいから、牛を殺すような真似はしない。痩せ細らせても、生かして乳を搾り続けるんです。」
佐藤さんは駒台の歩を手に取った。
「なるほどのう。で、今の連中は?」
「彼らは『この痩せ細っている牛にステーキを食わせれば、もっと乳が出るはずだ!』と本気で信じているようなものです。国の借金なんぞ気にせず、100兆円も国債を刷って国民に配れば景気は良くなると叫んでいる。そんなことをしたら、円の価値は暴落し、物価は天井知らず。あっという間にハイパーインフレですよ。牛は栄養失調どころか、ショック死してしまうでしょう。」
鈴木さんは腕を組んでうなった。
「つまり、じわじわ弱らされるか、一気に殺されるかの違いか…。どっちも地獄じゃな。」
佐藤さんはそっと王手をかけ、こう言った。
「ええ。そして、もっと滑稽なのは、その牛自身が『明日はステーキが食えるぞ!』と、自分の解体ショーの列に並んでいることですよ。」